yuo_nakamuraのブログ

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羊たちの沈黙 レビュー

 「羊たちの沈黙」を、先日で初めて見た。

 行きつけの古本カフェで店主と話していた際、お気に入りの映画の話になった。私が「永遠に僕のもの」や「容疑者Xの献身」が好きな映画だと話していたら、店主は「ハンニバル」を勧めてきた。猟奇的な天才殺人鬼の話だと。檻の中に囚われている天才殺人鬼に、FBI捜査官が当時起こっていた連続殺人の助言を求める話だと。そう聞いて、非常に面白そうだと思ったので、帰宅するや否や早速観始めた。調べみると、どうやら「ハンニバル」の前作が「羊たちの沈黙」だったらしく、そこから観始めるのが良いとのことなので、まずはそちらから観ることにした。

 

※以下、ネタバレを含みます。

 

 感想を一言で言ってしまえば、すごく面白かった。前半はあまり面白くなかったのだが、クラリスが羊たちの叫びを告白したシーンでぐっと引き込まれ、以降のシーンも全て面白かった。同シーンの、レクター博士のこちらの心の中をじっと抉るような表情も印象的だった。段々表情がアップされるにつれ、こちらの心の中までも見透かされているような気分になった。また、連続殺人事件の犯人の家にクラリスが訪れた際のドキドキ感も楽しめた。

 

 ただ、いまいちよく分からなかった点が、「羊たちの沈黙」のタイトルの意味だ。作中で、クラリスが「小さい頃、朝起きると小屋の中で大量の羊たちが悲鳴をあげているのを聞いて恐ろしくなった」という旨の話をする。その悲鳴を聞いて、恐ろしく、そして可哀想になり、「一匹だけでも逃がしてあげよう」と考えたクラリスは羊を一頭抱え、遠くへ遠くへと走る。その途中で保安官に捕まったという話だ。

 

 これは、レクター博士の「連続殺人の犯人の情報を教える代わりに君の過去を教えて欲しい」というやり取りの中で出てきたものである。クラリスは母子家庭の出身で、小さい頃に預けられていた牧場から逃げ出したという過去があったのだが、なぜ逃げ出したのかについて語りたがらない。そのことについてレクター博士クラリスに何度も問いかけるが、答えたがらない。そして、終盤になって彼女はやっと答えるのだ。羊の悲鳴の話を。そして彼女は今も時々その悲鳴の夢を見るらしい。

 

 レクター博士は、クラリスに「バッファロー・ビル(連続殺人事件の犯人の呼び名)が捕まったら羊たちは黙ると思うか」と問いかけ、クラリスが「分からない」と答えるシーンがあったのだが、なぜそんな質問をしたのか、こちらもクラリスとは別の意味で分からなかった。

 なんとなく思ったことがある。それは、バッファロー・ビルに捕まっていた女性と犬の叫び声がやたらと印象深く、「悲鳴」と結び付けられるのではないかということだ。女性と羊たちを重ね、女性を救うことでかつて救いきれなかった羊たちを救うことに繋げてトラウマを克服できるのではという意図の質問のようにも思うが、ただ、それにしても一番大切に思われる「羊たちの悲鳴」の正体についてはっきりと分からないのがなんだか釈然としない。そもそもなぜ羊たちは悲鳴をあげていたのか? そこは大切ではないのか。

 

 そう思って調べてみると、羊の叫び声は屠殺される際の声という意見があった。なるほど。

ameblo.jp

 

  レクター博士クラリスの関係性がなんとも良い作品だった。